全日空商事株式会社 様
Zabbixを用いた監視システム内製化による運用コストの削減
全日空商事株式会社
IT推進部 ITマネジメントチーム
チームリーダー 吉田 陽 氏
プロジェクトマネージャー 為実 隆人 氏
全日空商事株式会社は、航空機部品の調達、航空機の輸出入・リース・売却、機内サービス・販売用物品の企画・調達、および全国空港売店の運営などの航空附帯事業のほか、紙・パルプや食品の輸入販売、半導体・電子部品の輸出入、広告代理業、インターネットショッピングサイトの運営などをおこなっています。
01
導入前の課題
環境の変化とシステムの移り変わりにおける監視運用
全日空商事IT推進部(以下、「IT推進部」という)様では、社内および全日空商事グループ向けの共用システムを中心に計画の立案、サービス提供や保守運用をおこなっています。IT推進部様では近年、業務のIT化が進みシステム環境が増大したことで、限られたメンバーで効率的に保守運用をおこなうため全日本空輸株式会社(以下、「ANA」という)グループのセキュリティ基準を満たすIaaS環境と外部サービスを活用していました。しかし、そのサービスを利用し運用をおこなっていく中で、以下のような課題が認識されるようになりました。
監視サービス費用の増加
外部監視サービスの利用当初は管理対象となるシステム数も少なかったため特に問題がなく運用ができていましたが、システムが増大し、サーバー台数が増加した結果、監視コストが高額となってきたことが課題として認識されるようになりました。
サービスレベルに見合った運用体制・監視環境の見直し
従来の監視サービスは24時間365日のサービスデスクを有するものでしたが、環境によっては過剰なサービスレベルとなるケースがあり高コスト化にもつながっていることから、サービスレベルに見合った体制・監視環境への見直しをおこなう必要がありました。
当社は長きにわたりIT推進部様でのIT運用業務を支援しており、特にシステムの保守運用について日頃からさまざまな課題対応をおこなっていました。その中でこの監視サービスについての課題改善を現場業務支援メンバーが企画し、当社の監視システム有識者と実現性・効果を検討のうえIT推進部様へ提案させていただきました。
可能な限り早く監視サービス環境を刷新しコスト効果を出したいというご要望もあり、短期間での改善に取り組むこととなりました。
02
選定・導入決定ポイント
運用コスト削減のために、監視サービスをアウトソースから内製化へ見直し
IT推進部様のご要望はコスト面を最大限考慮しつつ短納期でデリバリーをおこなうこと。さらにお客様環境で求められるサービスレベルを満たしつつ、稼働後は社内でより効率的に監視システムの保守・運用がおこなえるようメンテナンス性を兼ね備えることでした。そこで先の課題を解決すべく、現場業務支援メンバーが当社の監視ソリューション提供部隊と連携し、統合監視システムZabbixの新規導入を進めました。
導入コストを抑えながら短納期でのデリバリーを実現
当社のソリューション・サービスに「まるごとおまかせZabbix 快速Z」というものがあります。低コストでZabbix環境を構築できるサービスながら、幅広い監視項目の設計と導入に対応しています。今回の要件では本サービスが完全にマッチしていて、要件定義からデリバリーまでの工程、役割分担があらかじめ明確になっているため費用も最低限で収まります。IT推進部様にもご協力いただき当社作業分とのすみ分けがスムーズにおこなえたため、ご要望通り要件の洗い出しから3カ月でシステムを稼働させることができました。
導入後の保守運用を意識した構築時のサポート
当社は、システムを稼働させるだけでなくその後の保守運用をいかにスムーズにおこなえるかということも重要と考えています。今回の支援では以下を意識してデリバリーをいたしました。
- お客様の要件や運用負荷を踏まえて、Zabbixで実装する監視レベルを最適化すること
- 稼働前の準備工程として、Zabbixの機能説明と実機を使用した引継ぎを保守運用ご担当者向けにおこなうこと
- 当社独自の日本語マニュアルを提供すること
- システム稼働後のお客様監視業務における運用のサポートや、お客様ルールに沿った個別ドキュメントの整備なども継続しておこなうこと
単に監視環境をリプレースするにとどまらず、その後の安定運用も見据えたサポートを継続的に実施しています。
03
導入決定から本番稼働までのプロセス
設計・構築コストを最低限に
「まるごとおまかせZabbix 快速Z」導入の流れ
メニュー化された構築パッケージで設計・構築コストを最低限に
当社では監視ノード数10台程度の小規模監視環境から、10,000台に迫る大規模監視環境まで、さまざまな監視環境の構築実績があります。それらの実績から、多くのお客様で必要となる共通の監視項目や設定を集約し構築ノウハウとして蓄積しています。
その構築ノウハウをパッケージとすることによってメニュー化し、Zabbixの構築においてもっともコストが掛かる監視要件を決定する手間を極力排除した形としています。おおむねの監視環境は、このパッケージ化された監視項目設定で網羅できます。
「まるごとおまかせZabbix 快速Z」 導入の流れ
※本事例では、お客様の「ヒアリングシート記入」、「構築基盤の準備」も、当社の運用メンバーサポートのもと実施しました。
監視運用担当者がヒアリングシートを記入するメリット
今回のケースでは、ヒアリングシートを利用することにより、短期間で監視対象と監視項目要件のとりまとめを、おおむね2週間で完了することができました。
どのようなお客様においても、まず監視対象と監視項目のヒアリングから実施します。この場合、多くのケースでプロジェクトを担当されるエンジニアの方は監視要件を網羅的に把握しているケースは少なく、結果、別のご担当者へのヒアリングが必要となるなど、手間とコストが増加してしまいます。
また、さまざまなプロジェクトや運用をおこなっているご担当者にとっては、Zabbixに特化した監視設定方法のノウハウを新たに取得することは少なからず負荷を伴います。
そこで当社ではヒアリングシートを利用し、Zabbixに特化した技術的な要素を極力排除することによって、監視運用を担当されている方が監視要件を簡単に記入できる形を採用しています。結果、要件定義から設計工程に至る部分を最適化することにつながり、短期間での設計とコストの圧縮を実現しています。
構築基盤の準備
Zabbixの動作基盤となるOS(Linux)の準備は当社業務支援メンバーサポートのもと、IT推進部様にご担当いただきました。OS導入の土台となる仮想基盤ならびにネットワーク構成を熟知している方に準備いただくことによって、短期間での設計とコストの圧縮を実現しています。
構築する時点で最適なOS(Linuxのディストリビューション)は何か、データベースは何を選択すべきか、などの悩みを抱えることがありますが、今後数年間にわたって維持・保守する前提で当社からの提案・サポートもおこなっています。
また、サーバーリソース(CPU、メモリ、ストレージ領域など)のサイジングもヒアリングシートをご提出いただいたと同時に決定でき、ヒアリングシート記入後すぐに構築基盤の準備を始めることができました。
監視設定の準備
当社側ではヒアリングシートを提出いただいたと同時に監視設定の準備を進めています。あらかじめ準備済みの監視テンプレートなどに対して監視対象を関連付け、具体的な発報しきい値を付与する形となっています。プロセス監視やログ監視など一部テンプレート化できない監視項目もありますが、構築基盤をご準備いただく間に並行して監視設定を準備することによって、1カ月程度の期間で導入準備が整いました。
ここまでの工程で、Zabbix導入手順、監視設定の準備ならびに単体テストまでが完了いたします。
短期間での導入・テスト完了
IT推進部様に準備いただいたOSなどの基盤上にZabbixと関連コンポーネントの導入を実施しました。この際、Zabbixの動作設定と監視設定はデータベースイメージの持ち込みといった形を取らせていただきました。また、Zabbixと関連コンポーネントの導入に必要となる資材については、セキュリティに配慮する形で最小限に留め、作業を最適化しています。
新型コロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言下での作業となりましたが、IT推進部様のご協力もあり導入作業もすべてリモート接続環境下で実現し、三密回避をはじめ今後の働き方に対するひとつの実績となりました。なお、導入開始からZabbixの起動まで、1日の作業で完了しています。
引き継ぎを経て、本番稼働開始
ここまでのプロセスで、Zabbixによるシステム監視がおこなわれている状態となりました。この環境を用いてZabbixの概要、監視画面ならびに監視設定の追加方法といった操作説明を中心とした引き継ぎを実施しました。以上で監視システムの構築および運用準備が完了し、本番稼働が開始されました。
04
導入効果や製品・サービスの評価
監視コストの大幅な削減、かつ運用品質が向上
本対応により、これまで監視サービスにかかっていた費用が大幅に削減できました。また、システムを内製化したことにより、監視設定の追加・削除など変更が社内でおこなえるようになったため、スポット費用の削減や即時の見直しが出来ることで運用品質の向上にも寄与しました。
日々の運用支援をおこないながら、監視コストの削減というテーマに対して改善企画~デリバリーまで当社が一貫して対応し、お客様IT環境の安定運用、最適化を実施しました。
今後も監視対象のシステムを安心してご利用いただけるよう監視環境の日々の保守・運用、必要に応じた改善、構築支援などを通じてサポートを継続してまいります。
05
同様な課題を持つ企業へ
監視コストの最適化をはじめとした運用改善の課題をもつお客様に
当社は運用支援をはじめとして、多くのお客様先での運用フェーズにおける課題解決、改善検討をおこなっています。また、オープンソースの監視システムであるZabbixに関する技術についても多くの実績を有しています。監視環境の新規構築、見直しはもちろんのこと、お客様固有のシステム環境や課題を理解し、最適なアプローチを提案できることが当社の強みです。
コスト削減、人材不足、DX化推進など、昨今の企業におけるITシステムを取り巻く環境はさまざまな局面にさらされています。監視システムをはじめとしたITシステムの構築作業やITシステムの運用改善に課題をお持ちのお客様はぜひ当社にご相談ください。
06
製品・サービス提供会社への感想や今後の期待
監視環境の見直しから、その後の運用も見据えた手厚いサポート
導入前の課題と当初の期待
当社が従来利用していた監視サービスは、システム規模と監視対象のサーバー台数が増加したことで、サービス費用が高額になっているという課題を抱えていた。
この監視サービスの見直しにあたり、手戻りや手違いがなく計画通りのコストで、既存サービスから監視レベルを下げずに推進する必要があったが、以前から当社のIT運用を支援し、Zabbixの認定パートナーであり数多くのZabbix構築経験があるアークシステムなら、それらの要望を満たせるという期待感があった。
また本件は当社のIT運用を支援しているアークシステムから、運用改善の一環として提案をいただいたことがきっかけであったが、そういった積極的な提案をいただいたことも検討の後押しとなった。
支援に対するご評価
当初の期待通り、監視環境の見直しを実施していただいたことで監視サービスの費用や運用レベルを改善できた。また当初の期待を上回る成果をあげてくれた点として
- Zabbix導入後の運用を見据えて、マニュアルや運用の仕組みを整備してくれたこと
- マニュアルを利用した引継ぎを実施し、運用部隊へのスムーズな引き渡しができたこと
- 当初は当社単独環境に対する監視を想定していたが、当社グループ会社に対する展開もその後の運用支援のなかで実施いただいていること
などのシステムのリプレースのみに留まらないサポートやアフターフォローをいただいていることは非常に評価している。
今後一緒にチャレンジしていきたいこと
ANAグループは現在航空事業以外の事業の多角化を進めていて、今回の監視環境の見直しに限らずITを活用したさらなるコスト削減や働き方改革、DX推進などに取り組みたいと考えている。
今回構築していただいたZabbixの活用、利用拡充に留まらず、DX推進、RPA、IoT活用などのキーワードをはじめとしたIT技術の活用をともに検討し、推進していきたい。
全日空商事株式会社 IT推進部 ITマネジメントチーム
チームリーダー 吉田 陽 氏
プロジェクトマネージャー 為実 隆人 氏
※ 掲載内容ならびに社名等の記載は、取材当時のものです。