Zabbix × アークシステム
Alexei Vladishev 氏、寺島 広大 氏 インタビュー
2025.08.21/株式会社アークシステム
監視から可観測性へ
~Zabbixが描く未来のITモニタリングとZabbix Cloudが日本市場にもたらす変革~
オープンソースの監視ソフトウェアとして日本で着実にシェアを伸ばしている「Zabbix」。先日新バージョンであるZabbix 7.4がリリースされ、来年には次期LTSバージョンであるZabbix 8.0の発表を控えています。
Zabbix LLCのCEO Alexei Vladishev氏がこのたび来日されたことに伴い、Zabbix Japan LLCの寺島広大氏にもご同席いただき、当社にて対談インタビューを実施いたしました。本インタビューでは、監視分野で注目を集める「可観測性(オブザーバビリティ)」に対するAlexei Vladishev氏の見解や、日本市場への展開が期待される「Zabbix Cloud」について、貴重なお話を伺うことができました。
Zabbix LLC
創設者兼CEO アレクセイ・ウラジシェフ(Alexei Vladishev)氏
Zabbix Japan LLC
代表 寺島 広大 氏
01Zabbixの戦略的ポジショニングと市場の認識
Zabbixはオープンソースの監視プラットフォームとして、柔軟性とコスト効率を強みとしています。APMやオブザーバビリティ市場におけるZabbix社が考える位置づけ、同市場におけるZabbixの優位性について、CEOとしてどのようにお考えですか?Zabbixが目指す独自のポジショニングを教えてください。
Alexei Vladishev 氏:
Zabbixは市場において、非常にユニークなポジションを築いていると思います。それは、いくつかの重要なコアバリューに基づいています。
まず第一に、Zabbixは完全に無料で、オープンソースです。これは、私たちとユーザーの間に何の障壁もないことを意味します。誰もが、費用を支払うことなく、エンタープライズレベルの全機能を活用できます。
同時に、私たちはZabbixをどのように実行するかについて、人々に柔軟性を提供しています。オンプレミスにデプロイすることもできますし、AWS、Azure、Google Cloudのようなパブリッククラウド上で有償のサービスとして利用することも可能です。そして、2025年からは「Zabbix Cloud」と呼ばれるエンタープライズ向けSaaS版も提供しています。
そして、もう一つの大きな強みは、ZabbixがKubernetes監視やクラウドインフラ監視といった、特定の狭いニッチな領域に限定されていない点です。私たちは、ユーザーが抱えるあらゆるユースケースをカバーできる、柔軟でユニバーサルな監視・可観測性プラットフォームとしてZabbixを構築しています。

02可観測性(オブザーバビリティ)に対するZabbixのビジョン
近年、メトリクス・ログ・トレースを統合した「可観測性」が重要なキーワードとなっています。Zabbixは主にメトリクスの収集に強みがありますが、この可観測性のトレンドにどのように対応していく計画でしょうか?具体的なビジョンをお聞かせください。
Alexei Vladishev 氏:
私たちは常に、Zabbixをオールインワン・ソリューションとして構築してきました。それは、まさに私たちのDNAの一部です。Zabbixは、データ収集から、問題や異常を検知するためのリアルタイム処理、アラート、そして可視化に至るまで、すべてをカバーしています。
歴史的に、私たちの主要な焦点はメトリクス、ログ、そしてテキストデータにありました。しかし、私たちはZabbixの知識と技術が、さらに広範囲に応用できると信じています。例えば、トレースのような複雑な構造化データ、ネットワークデバイスからのストリーミングデータ、さらにはバイナリデータや画像にまでです。正直なところ、ここに限界はないと考えています。
「可観測性」という言葉に関しては、多くの定義が存在します。個人的には、これを完全な透明性、つまり、私たちが監視しているものを明確に見通せることだと考えています。これを達成するには、あらゆる種類のデータを収集する能力に加え、非常に複雑な情報を人間が簡単に理解できる形で提示できる、新しいタイプの可視化を導入する必要があるでしょう。
可観測性(Observability)
可観測性とは、システムの外部から得られるデータ(メトリクス、ログ、トレース)を分析することで、そのシステム内部の状態や動作を詳細に把握する能力のことです。簡単に言えば、「なぜシステムがそのような振る舞いをしているのか?」という疑問に答えを見つけ出すための、より深い洞察を得るためのアプローチです。
従来の監視(モニタリング)が「システムがダウンしているか?」や「CPU使用率は高すぎないか?」といった既知の問題をチェックすることに重点を置くのに対し、可観測性は未知の問題や予期せぬ事象が発生した際に、その根本原因を迅速に特定することを目指します。
これを人間の体に例えるなら、以下のようになります。
- 監視(モニタリング):
体温計で熱を測ったり、体重計で体重を測ったりする行為です。「熱がある(異常だ)」という事実は分かりますが、その原因までは特定できません。- 可観測性(Observability):
健康診断で、体温、体重、心拍数、血圧、血液検査の結果といったあらゆるデータを組み合わせて分析し、「なぜ熱が出ているのか(ウイルス感染か、疲労か、炎症か)」を総合的に診断する行為です。可観測性を実現するためには、以下の3つの柱となるデータを統合的に収集・分析することが不可欠とされています。
- メトリクス(Metrics):
CPU使用率やメモリ使用量、リクエスト数など、一定時間ごとに測定される数値データ。- ログ(Logs):
システムやアプリケーションが実行した処理の履歴を記録したテキストデータ。- トレース(Traces):
1つのリクエストがシステム内でどのような経路をたどり、各サービスでどれだけの時間を費やしたかを追跡するデータ。
03Zabbixの戦略的ポジショニングと日本市場の独自性
日本市場ではサポート体制や保守運用を重視する傾向が強く、特定のベンダー製品への信頼性がビジネス上の重要な要素となります。この日本市場の独自性について、日本支社としてはどのようにお考えですか?
Zabbixが日本でさらに成長するための独自のポジショニングを教えてください。
寺島 広大 氏:
日本におけるZabbixはインフラの監視製品として認知度が高く、ユーザーの信頼も得られていると感じていて、海外と比較してそこまで特殊だとは考えていません。海外でもサポートが必要なお客様は金融系や通信系、公共系が多いということも日本のユーザーと共通点は多いと思います。ただ日本の場合はインフラ監視のデファクトスタンダードというポジションが確立できたと考えていて、それが日本市場においての優位性になっているのではないかと考えています。
Zabbixは製品そのものが継続的にアップグレードされ続け、日本支社があるという安心感もあります。当たり前かもしれませんが、Zabbixが日本でさらに成長するためにはそういった当たり前の領域をきちんと継続していくことが重要であると考えています。

04クラウド環境への対応とビジネスモデル
Zabbixはハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境の監視において、その柔軟性が大きな強みとなります。一方、競合他社は従量課金制でクラウドネイティブなサービスを強く打ち出しています。Zabbixのビジネスモデル(販売チャネル、サービス提供)は、この動的なクラウド市場の動きにどのように適応していくのでしょうか?
特にZabbixが考えるクラウド環境でのマネージドサービスの可能性についてお聞かせください。
Alexei Vladishev 氏:
Zabbixの真の強みは、ユーザーがそれをどのように実行し、どのような商用サービスを利用したいかについて、完全な自由を与えている点にあります。オンプレミスにデプロイすることも、パブリッククラウドで利用することも、あるいはZabbix Cloudを使うこともできます。提供方法は異なりますが、常に同じ機能を持つ同じ製品なのです。
私たちのSaaSプラットフォームであるZabbix Cloudについては、マネージドサービスプロバイダーにとって優れた選択肢となるよう、特に力を入れてきました。Zabbix Cloudはメンテナンス不要で、セキュリティ機能が内蔵されており、複数の環境を管理する必要がある組織のためにマルチテナンシー(多重テナント)を完全にサポートしています。
05日本のITインフラ(オンプレミス)とクラウド環境への対応
日本市場は、欧米に比べてまだ多くの企業がオンプレミスのレガシーシステムを運用しており、ハイブリッドクラウド環境への移行が進行中です。Zabbixはこの多様な環境(オンプレミス、クラウド、ハイブリッド)にどのようにアプローチしていきますか?
特に、古くから存在するレガシーシステムの監視を効率化しつつ、同時に最新のクラウドネイティブ環境をシームレスに統合するための具体的なビジョンをお聞かせください。
寺島 広大 氏:
まずハイブリッド環境があることそのものがZabbixの強みになると思っています。日本ではZabbixはまだまだオンプレミス環境で使うものであるというイメージが強いため、最近は対外的なイベントなどでもZabbixはクラウド環境の監視ができることや、そのためにZabbix Proxyが活用できることを意識してアピールしてきました。
Zabbixはオンプレミスにもクラウドにも構築でき、Zabbix Proxyを活用すればハイブリッド環境にも対応が可能、さらに特定のクラウドに依存しないマルチクラウドでの監視もできます。それらが日本市場においてはまだまだ認知されていないと考えているため、その認知度を上げていくことを継続したいと考えています。
またZabbix 7.0以降クラウド監視のテンプレートが標準搭載されるなどZabbix製品としてもクラウドへの対応は進めているため、その認知度も上げていきたいと考えています。そのようなことができる製品はあまり多くないため、Zabbixの強みの1つになると考えています。

06Zabbix Cloudの戦略的価値と日本市場へのメッセージ
クラウド環境と言えばZabbix Cloudもありますが、Zabbixの技術的柔軟性とSaaSの利便性を両立させるソリューションとして、大きな期待が寄せられています。Zabbix Cloudが既存のセルフホスト型Zabbixと競合他社のSaaS監視ツールの中間に位置する存在だと考えた場合、Zabbix Cloudの最も重要な差別化要因は何でしょうか?
特に、日本市場の顧客に「Zabbix Cloudを選ぶべき理由」を伝えるとしたら、どのようなメッセージを打ち出しますか?
Alexei Vladishev 氏:
Zabbix Cloudの最も重要な競争上の優位性は、メンテナンスのオーバーヘッドなしに、Zabbixのフルパワーを享受できる点にあると思います。ユーザーはただ利用するだけでよく、それ以外のことはすべて私たちが対応します。
また、ハイブリッド環境にも完璧に適合します。Zabbix CloudとZabbix Proxy、あるいはZabbixのハードウェアアプライアンスを組み合わせれば、非常に強力なセットアップが実現できます。これにより、クラウドとオンプレミスの両環境を、集中管理しつつも完全に分散した、まさに「真のシングルペイン・オブ・グラス」の体験を提供します。
そしてもちろん、コストももう一つの大きな要因です。私たちは、隠れた費用が一切ない、透明性の高い固定価格モデルを採用しています。率直に言って、Zabbix Cloudは現在市場で入手可能な監視ソリューションの中で、最もコスト効率が高いと確信しています。
シングルペイン・オブ・グラス(Single-pane-of-glass)
シングルペイン・オブ・グラスとは、複数の異なるシステムやツールが生成する情報を、一つの画面(ダッシュボード)で統合的に表示するという概念です。文字通り、「一枚のガラス窓を通してすべてが見える」状態を意味します。
IT環境が複雑化する現代では、サーバー、ネットワーク機器、クラウドサービス、アプリケーションなど、さまざまな要素が連携して動作しています。これらの各要素を個別のツールで監視していると、何か問題が起きた際に、担当者は複数の画面を切り替えながら原因を特定しなければなりません。
シングルペイン・オブ・グラスの目的は、この煩雑さを解消することです。さまざまなデータを一つのダッシュボードに集約することで、システムの全体像を一目で把握し、問題の発生場所や関連性を迅速に特定できるようになります。
これにより、運用担当者は迅速な意思決定を下すことができ、障害対応時間の短縮や、より効率的な運用が可能となります。
07日本市場におけるZabbix Cloudのターゲットと導入障壁
Zabbix Cloudを日本市場で展開する際、どのような企業やユーザー層をメインターゲットとして考えていますか?また、Zabbix Cloudの普及を阻む日本特有の障壁(例:セキュリティ要件、既存オンプレミス環境との連携)は何だとお考えでしょうか。
その障壁をどのように乗り越えていく戦略をお聞かせください。
寺島 広大 氏:
まずZabbix Cloudの日本展開について、Zabbix認定パートナーの皆様と議論をしながら、ビジネスモデルやターゲットを検討中です。利用ユーザーのイメージは感覚的にもっているものの、現在日本でサービス展開していただいている認定パートナーの皆様と共通認識をもってZabbix Cloudを訴求できるかどうか検討していきます。
ただ日本はまずはライトな使い方をする領域にニーズがあると考えていて、オンプレミスでZabbixを利用したいがZabbixのインストールをはじめOSやDBの準備が難しい環境、いわゆる中小規模のシステム監視に活用してもらいやすいと想定しています。またこれまでZabbixが広く利用されてきたITインフラ領域以外で活用いただけるのではないかと考えています。
Zabbix Cloudは安価に利用できることがメリットである反面、これまでのようにZabbixの構築や運用に対する技術的な課題解決を中心としたサービスとは全く異なるものだと考えており、ユースケースやお客様のニーズがどこにあるのかを探していきたいと考えています。監視は必要ですがZabbixをこれまで利用してこなかった領域、検証環境などライトに監視したい領域などに活用していくことがポイントになると思っています。

08Zabbix Cloudのセキュリティとデータレジデンシー
日本企業、特に金融や公共分野では、データの所在やセキュリティコンプライアンスに関して非常に厳しい要件があります。Zabbix Cloudは、これらの要件にどのように応えていきますか?
具体的には、日本国内でのデータレジデンシー(データの保存場所)に関する計画や、システム間を接続する回線の提供(例:PrivateLinkやDirectConnectのサポート)、提供を検討しているセキュリティ認証(例:SOC2など)についてお聞かせください。
Alexei Vladishev 氏:
Zabbix Cloudは、セキュリティとコンプライアンスをその中核に据えて構築されています。言わば、「設計段階から安全である」ということです。各ノードは完全に独立しており、CPU、メモリ、データベースのようなリソースは共有していません。さらに高いレベルのセキュリティを実現するため、DirectConnectまたは同様のサービスのサポートを追加する予定です。
コンプライアンス面では、Zabbix CloudはすでにISO認証を取得しており、現在SOC2認証の取得を進めているところです。現在、当社のノードは7つの異なるリージョンに展開可能で、日本を含むさらなるリージョンへの拡大を進めています。日本への展開は、年内か来年初頭を予定しています。
09ハイブリッドクラウド監視におけるZabbix Cloudの役割
多くの日本企業は、既存のオンプレミス環境を維持しつつ、一部のシステムをクラウドに移行するハイブリッドクラウドの段階にあります。Zabbix Cloudは、オンプレミスの機器とクラウド上のリソースをシームレスかつ効率的に監視するために、どのような機能やソリューションを提供しますか?
寺島 広大 氏:
Zabbixはこれまでオンプレミスで利用されることが多かったものの、最近はクラウド環境内の監視にも利用されています。現在はそれぞれにZabbixサーバーが構築されていることが多いですが、Zabbix Proxyを利用することで、どちらか片方のZabbixサーバーを利用してクラウドとオンプレミスを統合的に監視ができます。Zabbix Cloudを利用することで、クラウド上のZabbixサーバーをより簡単に構築できる1つの選択肢になると思います。
また、Zabbixはメジャーなパブリッククラウドの監視機能も標準搭載し、マルチクラウドの監視にも対応します。Zabbix Cloudからパブリッククラウドを監視することも、Zabbix Proxyと組み合わせてクラウド、オンプレミス全体を統合的に監視することも可能です。

10Zabbix Cloudの価格体系とパートナー戦略
Zabbix Cloudの価格体系は、日本市場において競争力を持つよう設計されていますか?特に、競合他社が提供する従量課金モデルと比較して、どのようなアプローチでコストメリットを訴求しますか?
Alexei Vladishev 氏:
私たちはZabbix Cloudで、非常に分かりやすい固定価格モデルを採用しています。費用は、必要なパフォーマンスレベルとストレージ容量のみに依存し、それ以外の要素は一切ありません。メトリクスごと、ユーザーごと、デバイスごとに別途料金が発生することはありません。
これは、多くの他社ベンダーとは大きく異なります。彼らは、さまざまな製品階層や機能ベースの課金、そしてメトリクスやユーザーに対する追加料金といった、複雑な価格体系を持つことが多いです。いわゆる「オブザーバビリティ・タックス」(監視に隠れたコスト)が非常に高額になる可能性があると、多くの企業が気づき始めています。私たちはZabbix Cloudで、全く異なる体験を提供したいと考えました。それは、シンプルで、予測可能、そしてコスト効率に優れたものです。
Zabbix Cloudの普及において、日本のパートナー企業はどのような役割を担うのでしょうか?
Zabbix認定パートナー企業がZabbix Cloudを商材として扱い、付加価値を提供するための具体的な支援策(例:トレーニング、インテグレーション支援、共同マーケティング)についてお考えをお聞かせください。
寺島 広大 氏:
Zabbix Cloudはこれまでのオンプレミスやクラウド上のZabbixサーバー、アプライアンス製品と並ぶ、Zabbixサーバーを動作させるプラットフォームの1つになると思います。Zabbix認定パートナーの皆様からみると、単純に再販する製品ではなく、Zabbixサーバー自体の運用管理の手間をかけずに監視システムを導入でき、ユーザーに提案できるソリューションの1つと考えています。
これまでに提供している公式サービスやパートナーのサービスを組み合わせて、新たなソリューションとして提供できる価値を作っていきたいと思っています。
11ユーザーからのフィードバックと今後の機能開発
世界中のZabbixユーザーからは、さまざまな機能リクエストやフィードバックが寄せられていると思います。CEOとして現在最も注目している機能や、今後のZabbixのメジャーバージョンアップで実現したいと考えている「次の大きな進化」は何でしょうか?
例えば、機械学習による高度な予測や異常検知、あるいはより直感的なUX/UIなど、具体的なアイデアをお聞かせください。
Alexei Vladishev 氏:
現在、私たちのチームは、Zabbixを可観測性の分野において真に価値あるツールにするための機能追加に非常に注力しています。また、収集したデータからより深い洞察を引き出し、異常検知を改善するために、AIを含むさまざまなテクノロジーを研究しています。
同時に、もう一つの大きな優先事項はユーザビリティです。特に新規ユーザーにとってZabbixをよりシンプルにすることを目指しています。私たちの哲学は常に、「シンプルなことは簡単に、そして複雑なことは依然として可能に」というものでした。

12日本市場向けの機能開発とフィードバックの活用
Zabbixのユーザーからは、多くの機能リクエストが寄せられていると拝察します。日本市場のユーザーからのフィードバックで、特に印象的なものや、今後のZabbixの機能開発に影響を与えた例はありますか?
例えば、日本の商習慣に合わせたレポーティング機能や、特定の国産ハードウェアへの対応など、具体的なアイデアがあれば教えてください。
Alexei Vladishev 氏:
いくつか例があります。たとえば、多様なエンコーディングのサポートを含む、既存のログ監視機能は、日本のユーザーからのフィードバックに強く影響を受けています。別の例では、Zabbix Proxyのロードバランシングと高可用性です。これも実装前に日本で活発に議論されていました。
そして、今後についてですが、AI統合や可観測性に焦点を当てた改善など、多くの主要な新機能も、日本のユーザーのニーズを念頭に置いて設計・開発されるものと確信しています。
寺島 広大 氏:
Zabbix自体に対する新機能要望は世界中のユーザーから非常に多くいただいています。日本からの要望は可能な限り本社開発チームに伝えるようにしています。私の感覚では、日本と他国で要望が大きく異なったり、日本独自の機能要望というのはあまりないように思っています。
一方で、アプライアンスやIT領域以外への取り組みなど、日本で先行している取り組みもありますし、一般的な監視対象としても日本企業が国内でのみ販売している製品の監視をより容易にする取り組みなども行っていきたいと思っています。
13パートナーエコシステムと日本での人材育成
Zabbixのビジネスは、世界中のパートナーエコシステムによって支えられています。日本市場におけるZabbixパートナーとの連携は、今後どのように強化していきますか?
また、Zabbixの運用を担う技術者の不足は日本でも課題となっていますが、コミュニティ活動やトレーニングを通じて、日本のZabbixエンジニアをどのように育成していく計画でしょうか。
寺島 広大 氏:
今年からZabbixのコミュニティ活動を再開しているのですが、Zabbix Japan LLCを設立してから10年程度は会社としての独り立ちのために、日本国内のパートナーの皆様との連携を始めとしたビジネス領域に注力する必要があり、コミュニティ活動が思うように実施できていませんでした。
それから10年がたち、Zabbixが日本である程度のビジネスとして確立した今、今後はZabbixを利用する層をさらに広げていかなければならないと感じています。そのため改めてコミュニティ活動を再開しZabbixを幅広い人に知ってもらうことで、将来的なZabbixビジネスのフィールドを広げていきたいと考えています。
また日本のZabbixエンジニアの育成については、一時期Zabbixエンジニアが不足している状況もありましたが、今はトレーニングを受けている人も多くZabbixを理解している層は増えてきていると感じています。これからさらにトレーニングをオープンにして受講してくれる方を増やすということにも力を入れていきたいと考えています。Zabbixは設定の自由度が高い製品である反面、複雑にしようとすると幾らでも複雑な設定にできてしまうため、Zabbix初心者でも正しく効率的な設定ができるような設定方法を理解し、Zabbixをより活用していただきたいと思います。
14まとめ:Zabbixが描く未来と、日本市場へのコミットメント
今回の対談を通じて、Alexei Vladishev 氏と寺島 広大 氏は、Zabbixが単なる監視ツールではなく、変化し続けるIT環境に対応する「柔軟なプラットフォーム」であることを強調しました。
市場の認識に対する答えとして、Zabbixは他社の「オールインワン」とは異なる独自の道を歩んでいます。それは、オープンソースとしての自由とコスト効率を核に、ユーザーが求めるあらゆるユースケースをカバーできるユニバーサルな可観測性プラットフォームへと進化していくことです。
特に、Zabbix Cloudは、日本のIT技術者が直面する課題を解決する重要な鍵となります。メンテナンス不要でありながら、Zabbixの全機能を利用できる「ハイブリッド環境における真のシングルペイン・オブ・グラス」として、シンプルで予測可能なコストモデルを提供します。また、日本へのデータセンター展開やSOC2認証の取得計画など、日本の厳しいセキュリティ・コンプライアンス要件にも応えていく姿勢が明確に示されました。
最後に、Alexei Vladishev 氏は、Zabbixの機能改善において、日本のユーザーからのフィードバックが大きな影響を与えてきたことを明言しました。これは、Zabbixがグローバルな展開の中で、日本市場を極めて重要視していることの証しです。
今回のインタビューは、Zabbixが未来に向けてどのようなビジョンを描き、そしてそのビジョンに日本のユーザーが不可欠な存在であることを改めて示すものでした。Zabbixの今後の進化に、大いに期待が持てる対談となりました。
Alexei Vladishev 氏、寺島 広大 氏、ありがとうございました。
インタビュアー:
株式会社アークシステム
プラットフォーム技術部 飯出 和弘
アカウントセールス部 坂 哲夫







