2024年6月4日、Zabbix 7.0 正式版がリリースされました。LTS(Long Term Support)としては、約2年半ぶりのバージョンアップです。ここでは、当社エンジニアがお勧めするZabbix 7.0 LTSで追加ならびに改善された機能について、ピックアップしてご紹介します。Zabbix公式サイトによる新機能の説明につきましては、こちらをご覧ください。
Zabbix 7.0 LTS は、Interop Tokyo 2024 のマネジメント&モニタリング部門でグランプリを受賞いたしました。
データ収集の並列化と速度向上
従来、Zabbixのデータ収集プロセス(Poller)は同期収集方式と呼ばれる方式を採用していたため、アイテムのデータをひとつずつ順番に収集していました。バージョン7.0より非同期収集方式に変更され、アイテムのデータ応答を待たずに次のアイテムのデータを収集できるようになりました。この変更によって、ひとつのデータ収集プロセスで最大1,000アイテムの並行データ収集が可能となり、データ収集性能が大幅に向上しています。
この変更は、主にZabbixエージェント・SNMP・HTTPチェックの大幅な性能向上と高速化に寄与しています。
Zabbix Proxyの改善
バージョン7.0でもっとも注目すべき点はZabbix Proxy関連の拡張かと思います。負荷分散、可用性の向上ならびにZabbix Proxyそのものの性能向上など、紹介します。
高可用性と負荷分散
従来、Zabbix Proxyの可用性を高めるためにはZabbix Proxyを別途OS込みでクラスタ化するなどの手間が掛かっていましたが、バージョン7.0よりZabbix標準機能としてプロキシグループが追加されました。
まず、プロキシグループ内に複数台のZabbix Proxyを登録することで、Zabbix Proxy配下に設定したホストの均等分散が実施され、負荷分散が実現できます。また片系のZabbix Proxyが停止した場合において、配下に設定したホストがもう片系で動作中のZabbix Proxy経由で監視動作を再開するため、縮退運転が可能になりました。
Zabbix Proxyの登録台数、ならびにプロキシグループの登録可能台数に制限はないため、3台以上のZabbix Proxyを登録することや監視セグメント毎にプロキシグループを作成するなど、柔軟な高可用性環境が構築可能です。
処理性能に寄与した改善
Zabbix Proxy内部における収集データ管理方法が強化されました。バージョン7.0よりメモリ内データストレージのサポートによる性能向上が行われています。
- 収集データのバッファリングにおいて、ディスク・メモリ・ハイブリッドのモードから選択可能になりました(デフォルト値はハイブリッド)
- ディスクモードは、従来同様の動作が行われます
- メモリモードは、ディスク書き込みを行わないため速度性能としては最高速となりますが、バッファフル時におけるデータ欠損を許容する形になります
- ハイブリッドモードは、バッファフルまでメモリモードで動作し、バッファフル時においてディスク書き込みを実施する形になります
公式にはZabbix Proxyのパフォーマンスが最大10~100倍向上する(ハードウェア性能に依存)すると謳われています。
注意点と制限事項
- プロキシグループ内において、複数台のZabbix Proxyに対するホストの割り当て(個別指定)はできません
- Zabbix Proxy間における監視設定の同期は行われません。プロキシグループ構成であってもZabbix Proxyへの監視設定同期はZabbix Serverから行われます。そのため、Zabbix ServerとZabbix Proxy間のネットワーク切断時における動作は従来どおりの動作となります
- Zabbix ServerとZabbix Proxyのバージョンは従来どおり揃えてください。機能制限として、旧バージョンのZabbix Proxyに対する監視設定の更新は行われません
ダッシュボードウィジェットの追加
バージョン7.0より新しいダッシュボードウィジェットが導入され、監視データがよりわかりやすく確認できるようになりました。
例えば、新たにハニカムウィジェットを利用できるようになり、アイテムの値がよりグラフィカルに表示できるようになっています。
LDAP認証時におけるユーザーの自動登録
これまでは先にユーザーを作成しておく必要がありましたが、LDAP/SAMLのJIT(Just In Time)プロビジョニング機能が追加されたことで、LDAP認証時においてユーザーを自動的に登録できるようになりました。
既に登録されているユーザーは既存設定のまま、新規のユーザーからJITプロビジョニングで対応するなど、ユーザーグループの設計とあわせて柔軟な設定ができます。
Zabbix標準クラウド監視テンプレートの追加
Zabbix標準クラウド監視テンプレートが、LTS版となるバージョン7.0に搭載されました。(Zabbix 6.0に対してもバックポートされていましたが、適合バージョンまでアップグレードする必要がありました)
- AWS: EC2, RDS, S3, ECS, ELB, Lambda, Cost Explorer
- Azure: Azure VM, Azure Database, Azure Cosmos DB, Cost Management
- GCP: Compute Engine, Cloud SQL
当社では上記に含まれていないクラウド監視テンプレートの開発も対応可能です。こちらのページをご覧ください。
注意点
バージョン7.0になり、ますます便利に使いやすく高性能で魅力的になったZabbixですが、
- PHPの最低バージョンが8.0に引き上げられる
- ZabbixデータベースにおけるOracleの採用が非推奨になる(Oracleを監視できなくなる訳ではありません)
- ZabbixのライセンスモデルがAGPLv3に変更となった
などの変更も盛り込まれています。
上記のように、バージョン7.0を採用する場合やバージョンアップを検討する場合において、注意するべき点があります。特にバージョンアップにつきましては、十分な調査と検証の上で実施してください。当社はZabbixバージョンアップに対するご支援も承ります。詳細はこちらをご覧ください。
株式会社アークシステムはZabbix Japan LLCの認定パートナー企業です。
Zabbixに関する製品・サービスの販売に加え、Zabbix関連サービスの提供をしています。
(2018年度からZabbix認定パートナー幹事企業の1社として活動しています。)
運用管理技術のプロフェッショナルであるアークシステムが
Zabbix環境におけるさまざまな課題を解決いたします
当社の価値はお客様のビジネスを支える高度なIT技術や運用基盤の提供にあります。
お客様の課題や問題意識を受け止め、IT戦略/企画の立案、実行性のある計画作成から運用整備とデリバリーまで、さまざまな形態のサービス提供をしています。これまで培った運用管理技術とZabbix技術の豊富なノウハウと実績をもとに、実運用に耐えうる高品質なZabbix環境の構築や課題解決をいたします。
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