アークシステムは、2024年11月21日(木)~22日(金)に開催されたZabbix Conference Japan2024にゴールドスポンサーとして参加しました。今年で12回目を迎えたZabbix Conference Japanの様子をレポートいたします。

Zabbix Conference Japanとは?

Zabbix Conference Japanは、Zabbix Japan LLCが主催する、国内最大のZabbixイベントです。
Zabbix Japan LLCによるテクニカル講演やパートナー企業による講演、実際にZabbixを利用しているユーザーからの事例講演、Zabbixを利用したシステム運用を便利にするソリューションの紹介など、Zabbixに関して幅広いテーマで講演がおこなわれました。

また今年も昨年と同様にカンファレンスの直前Webセミナーとして11月18日(月)~20日(水)の3日間にわたりWebセミナーやオンライントレーニングが開催されました。Zabbixを使ったことがない方にとっては「Zabbixって何ができるの?」や「どうすれば使えるの?」などの疑問がまず出てくると思います。そのような疑問を解消するため、直前勉強会ではZabbixの基本的な機能やインストール方法の紹介、各機能の解説などの内容が充実していました。

当日のアジェンダおよび講演内容の詳細は、Zabbix Conference Japan 2024 公式サイトでご覧いただけます。
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2024(外部サイトへ移動します)

進化を続けるZabbixの今後の展望

カンファレンスのオープニングでは今後のZabbixの方向性について、Zabbix LLCの創設者兼CEOであるAlexei Vladishev氏による講演がおこなわれました。

Zabbixの創設者でありZabbix LLC CEOであるAlexei Vladishev氏がオープニングスピーチをおこない、講演の中で以下3つのポイントについて説明されました。

  1. Zabbix Cloudについて
  2. 最新バージョンZabbix 7.0 LTSについて
  3. 今後のロードマップとZabbix 8.0 LTSについて

Zabbix Cloudについて

2024年10月に発表されたZabbix Cloudについてお話をいただきました。

7つのTier(監視規模に応じた料金体系)、5つのリージョンで提供されており、お客様の環境に合わせてコストを抑えることができ、ストレージのサイズとパフォーマンスによってTierを選択することでコストが予測しやすい料金体系を用意しているそうです。Zabbix Cloud上のZabbixはバックアップポリシーをお客様が独自で定義することで自動的にバックアップをおこなうことができ、ノード(Zabbixサーバー)が完全に隔離されているため、非常に高いセキュリティが担保されているとのことでした。

ハイブリッドクラウド環境にも適していて、例えばインフラ環境がオンプレミスとクラウドに分散されている場合など、Zabbix CloudとZabbix Proxyを組み合わせて使用することにより、リモートで監視データを収集できます。

Zabbix Cloudはアカウント登録のみで使用できる無料トライアルがあり、そちらから利用開始ができます。
今後さらに機能を追加していく予定で、オンプレミスでZabbixを使用しているお客様のために、簡単にオンプレミスのデータを移行できる仕組みを整えていくとのことです。

※Zabbix Cloudの開発、販売、サポートはZabbixラトビア本社による直接対応(英語)となり、日本国内でのサポートは現時点で予定されておりません。

最新バージョン Zabbix 7.0 LTSについて

  • OSSであり続け開発の継続性を維持するためのOSSライセンス変更
    Zabbix 7.0 LTSからGPLv2→AGPLv3へのライセンス変更がありましたが、変わらず今後もZabbixがオープンソースであり続けるというお話をいただきました。
  • 可視化
    監視結果のデータを理解し活用しやすくすることに力を入れ、ダッシュボードの機能を大きく向上させています。ハニカムやドーナツ、地図上に拠点を表示するなどの豊富なウィジェットが増えました。またホストナビゲーターをはじめとするウィジェット間の連携機能を搭載し、対象ホストを選択した場合において別のウィジェットも連動してホストの情報が切り替わる機能が備わりました。開発のフレームワークも備わったため、ユーザーが独自に監視のカスタマイズをおこなえるようになり、それを共有できる機能も今後追加する予定とのことです。
  • スクリーンショットの保存機能を追加
    円グラフや折れ線グラフなどをスクリーンショットとしてダウンロードできるようになったことで、スクリーンショット保存の手間が改善されています。
  • Zabbix Proxyの冗長化と負荷分散
    1つのProxyがダウンしても、正常なProxyに監視を引き継いで稼働できるようになり、安全で信頼性の高いリモート監視をおこなえるようになりました。また、Proxyグループ内で自動負荷分散もおこなえるようになりました。
  • セキュリティ機能の向上
    セキュリティや多要素認証への機能を強化し、セキュリティに対するコンプライアンス意識の高いユーザーに今後もご利用いただくために尽力していくとのことでした。

今後のロードマップとZabbix 8.0 LTSについて

オープンテレメトリーのサポートやトポロジー、ネットフローデータ、ストリーミングデータの処理などの非常に複雑なデータを収集し、処理する機能を追加していく予定です。

Zabbixはあらゆるタイプのデータを収集し、データを可視化、分析できるようになることを目標とされています。
今後はZabbixのUIも大きく改善していく予定で、Zabbix専門のエンジニアの方以外も簡単に使用できるようにしていくとのことでした。

Zabbix 8.0 LTSは監視だけではなくオブザーバビリティ(可観測性)のあるソリューションを目指していくと語っており、APM(Application Performance Monitoring/アプリケーション性能監視)の実現やユーザーが使用しやすいイベントやログ管理の実装、異常検知、障害予測のためのAIや機械学習を取り入れ、監視対象に対し何らかのアクションをおこなうなどの管理機能も導入していく予定とのことでした。

他、現在開発中のZabbixの機能を知りたい方は、Zabbix公式サイト(英語表記)をご覧ください。
https://www.zabbix.com/roadmap(外部サイトへ移動します)

講演の中でAlexei Vladishev氏は「Zabbixはオープンソースであり続ける」ことを強調しており、今後も無償で利用できることやユーザーからの要望を反映した改善を継続することを語っていました。

ダッシュボードコンテスト

昨年に引き続きダッシュボードコンテストが開催されました。

温度センサーを用いた各部屋の温度監視や公共交通機関の混雑状況の監視、Zabbixでオセロをするといった斬新な発想をされた方もいらっしゃいました。参加者それぞれの方々がどういった情報を用いて監視をおこなうか、どのようにすればダッシュボードが見やすくなるか、悩まれたとおっしゃっていました。

Zabbix 7.0 LTSからダッシュボードのウィジェットが追加されたことで昨年よりもさらに工夫を凝らしたものが作れたのではないでしょうか。

当日の講演紹介

カンファレンスではZabbix Japan LLCの講演以外にも、パートナー企業の講演や、Zabbixを利用するユーザーによる導入事例・活用事例などの講演もおこなわれました。

Zabbixによるグリーンエネルギー利活用に向けたシミュレータ可視化の取組

トヨタ自動車株式会社 大野 允裕氏

トヨタ自動車株式会社の大野氏から、Zabbixを用いたグリーンエネルギー利活用の取り組みが紹介されました。

コネクティッドカーの普及やDX、AIなどテクノロジーの進化に伴いデータ量、処理量が増加傾向にありそれに伴い今後電力消費量の増加が懸念されます。

それに伴い省エネ化だけでなくクリーンエネルギ―の活用が必須となるため、今後日本全国各地域の再エネルギーを利用し、地産地消の分散コンピューティング基盤の計画をご説明いただきました。現状日本では太陽光発電によるグリーンエネルギーの導入が進んでいるため、いつどこでどの程度の発電ポテンシャルがあるのかを監視するためにZabbixを活用されたとおっしゃっていました。

Zabbixの利点は、すぐに活用できるOSSであること、必要なウィジェットがあること、サポートがあること、ドキュメントや事例が豊富であることでした。Zabbixを使用して直近の天気傾向に連動した太陽光発電状況をシミュレーションベースで可視化することで開発に役立てているというお話しでした。

小さなチームで大きく回せ!金沢大学におけるZabbixの活用

金沢大学 浜 貴幸氏

障害が発生した際の先手対応、品質監視で障害を予防やデータ蓄積のためにZabbixを利用されています。所属組織の人員不足をカバーするために全員が目視できる位置に警報灯を設置することで気づきの機会増加を図り、障害時に迅速にその内容を把握することや目視だけで初動判断対応ができるようにしたことで早急な対応が可能になり、スタッフ間のコミュニケーションが増えたとのことです。

2024年に起きた能登半島地震の際には、Zabbixのダッシュボードにより被災時に起きた障害が一目で視認できたことで、メンバーに素早く指示することができ、データを蓄積していたことで事後においても当時何が起こっていたのかを確認できたそうです。

さらにただの監視だけではなく、次期システム導入の際の投資判断を5年ごとにデータ収集、保存しておくことで、ハードウェアの使用状況をデータから判断し、次期システム導入の投資判断をおこなうという大変興味深い活用方法もお話しいただきました。

当社のスポンサー講演

当社は本イベントのゴールドスポンサーとして、カンファレンス1日目に講演しました。

「Zabbixを使って資産形成をしてみよう」と題して、昨年同様に私生活にZabbixを取り入れた活用方法を紹介しました。

個別株投資をしている方、始めようとしている方向けに個人投資家向けのAPIデータ配信サービスを用いてZabbixで情報収集する方法を紹介しました。取得したい企業コードと上場銘柄情報​、財務情報、​株価四本値​などのパラメータを指定することで各情報を収集できます。情報の収集だけではなく株価の予測や障害を検知した際にLINEへの通知をおこなうこともできます。

Zabbixを活用すれば株価に関する情報収集や予測などもおこなうことができます。Zabbixをご利用の方は新しいダッシュボードのウィジェット機能を利用しさまざまなものを監視、活用してみていただければと思います。

おわりに

Zabbix Conference Japan 2024の参加レポートは以上です。

今年も例年同様にZabbixに関する講演や公式サポート、Zabbixの活用方法などさまざまなテーマで講演がおこなわれました。ダッシュボードのウィジェット機能が豊富になったので試してみたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Zabbix Conference Japanは、今後リリース予定のバージョンで搭載される新機能や活用・導入事例について情報収集できるだけでなく、「Zabbixを使ってみたい!」や「もっと使いこなしたい!」と思えるようなモチベーションアップにも非常に良い機会だと考えています。

当社も認定パートナー企業の1社として、これからもZabbixの活用をキャッチアップするとともに、多くのユーザーにZabbixを使いこなすためのお手伝いをしてまいりたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


株式会社アークシステムはZabbix Japan LLCの認定パートナー企業です。
Zabbixに関する製品・サービスの販売に加え、Zabbix関連サービスの提供をしています。
(2018年度からZabbix認定パートナー幹事企業の1社として活動しています。)

運用管理技術のプロフェッショナルであるアークシステムが
Zabbix環境におけるさまざまな課題を解決いたします

当社の価値はお客様のビジネスを支える高度なIT技術や運用基盤の提供にあります。
お客様の課題や問題意識を受け止め、IT戦略/企画の立案、実行性のある計画作成から運用整備とデリバリーまで、さまざまな形態のサービス提供をしています。これまで培った運用管理技術とZabbix技術の豊富なノウハウと実績をもとに、実運用に耐えうる高品質なZabbix環境の構築や課題解決をいたします。

これまでの Zabbix Conference Japan レポート

過去に参加したカンファレンスのレポートをご覧いただけます。