Zabbix Conference Japanとは?
既にご存じの方も多いとは思いますが、Zabbix Conference Japanとは、Zabbix Japan LLCが主催する日本国内最大のZabbixイベントです。Zabbix Japan LLCのメンバーによるテクニカルな講演、実際にZabbixを利用しているユーザーによる導入・活用事例、パートナー企業によるZabbixをより便利にするソリューション紹介など、Zabbixに関して幅広いテーマで講演がおこなわれます。
また、今年から新たにカンファレンス直前勉強会として11月14日(月)から16日(水)の3日間にわたりWebセミナーやオンライントレーニング、パートナー企業によるウェビナーも開催されました。Zabbixを使ったことがない方にとっては「Zabbixって何ができるの?」や「どうすれば使えるの?」などの疑問がまず出てくると思います。そのような疑問を解消するため、直前勉強会ではZabbixの基本的な機能やインストール方法の紹介、各機能の解説などの内容が充実していました。
今年のカンファレンスは、直前勉強会を通じて「Zabbixを使ったことがない方」と「既に使っている方」のどちらにも楽しんでいただける内容であったことが印象的でした。
当日のアジェンダと講演内容については、Zabbix Conference Japan 2022の公式サイトでご覧いただけます。
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2022(外部サイトへ移動します)
世界から見たZabbixの現状と今後の開発の方向性
カンファレンスのオープニングは「Re-thinking Zabbix」と題して、Zabbix LLCの創設者兼CEOであるAlexei Vladishev氏の講演がおこなわれました。

Vladishev氏は、フォーチュン・グローバル500にランキングされている企業の100社以上がZabbixを利用していることに触れ、世界中でZabbixが広く使われていること、利用がさらに拡大していることを紹介しました。Zabbixが多くの企業に選ばれる理由としては「非常に自由度が高い=オープンソースであること」と「サポートサービスを通じた手厚い支援があること」の2点を挙げていましたが、これは日本でも共通していて、当社のお客様からも同様の声をよく聞きます。
また、Vladishev氏は開発のロードマップについて「Zabbixとは一体何なのか」や「どういう方向性がZabbixにとって正しい方向性なのか」を常に自問自答しながら考えていると語られました。開発をよりスピーディにおこなっていくためには、実装する機能の優先順位を明確にすることが重要として、日本のZabbixユーザーに対して「サポートサイトに設けているFUTURE REQUEST(ZBXNEXT)へのチケット登録や投票を積極的におこなってほしい」と、ユーザーの生の声や要望をもっと聞きたい、知りたいという開発のスタンスを明確に示しています。
ここで、講演のなかで紹介された今後搭載予定の新機能を紹介します。
- Webアプリケーションやサービス監視のためのブラウザエミュレーション機能の実装
- Zabbix ServerとProxy間のバージョン下位互換(Zabbix Serverのバージョン > Zabbix Proxyのバージョン)
- Causeイベント(原因イベント)とSymptomイベント(症状イベント)の追加、Causeイベントのみ表示
- イベントコリレイションエンジンの実装(イベントのフィルタリング、重複の排除など)
- Central Zabbix Serverへのイベント情報の集約、フィルタリング
- 新しいダッシュボードウィジェット開発のフレームワーク
- 監視設定の即時同期
- LDAPやSAMLからのユーザーアカウントの自動登録
- テンプレートのバージョン管理
上記の新機能をふくめ、最新のロードマップについてはZabbix Japan LLCの公式サイトでご覧いただけます。
https://www.zabbix.com/jp/roadmap(外部サイトへ移動します)
設立10周年を迎えたZabbix Japan LLCと今後の10年に向けて
日本国内で技術サポートや公式トレーニングなどのZabbix関連サービスを提供しているZabbix Japan LLCが、2022年10月で設立10周年を迎えました。

代表である寺島 広大氏はこれまでの10年を振り返り、サポートのお問い合わせ件数は約14,000件、トレーニングの受講者数は約4,000人に達したと紹介されました。サポートのお問い合わせ件数については、われわれのような認定パートナー企業が1次受けとして回答しているものもあるため、これよりも相当多い数をお問い合わせいただいているはずです。また、設立当初は約10社だった認定パートナーも現在では約60社まで増えており、これらの数字を見るだけでも、日本国内でZabbixを導入、利用する企業が増加し続けていることを実感します。

また、寺島氏は今後の10年に向けて、「Zabbix Japan LLCを設立した目的」を改めて語られました。
- Zabbixの日本国内における普及を支援すること
- 日本国内のZabbixユーザーを支援すること
- 日本国内のパートナー企業を支援すること
これらの目的をより高いレベルで実現するため、Zabbix Japan LLCが提供しているサポートサービスをより強化していくことが紹介されました。具体的には、以下の施策を検討されているということです。
- 技術サポートは付帯せず、Zabbix関連ツールのみが利用できるサポートプランの追加
- すべてのサポートプランの加入者向けに「入門トレーニング」を提供
- Zabbix Enterpriseサポート シルバーでZabbixプロキシオプションを利用可能に変更
加えて、Zabbixという製品自体へのフィードバックを強化するために「本社への機能要望や改善要望」や「パートナー企業との関係性強化」をより積極的に取り組んでいくと発表されました。ユーザーの置かれている状況に応じて選べるサポートの選択肢が広がり、技術お問い合わせ以外の付加価値が向上することで、より多くのお客様がサポートサービスを利用しやすくなることが期待されます。

事例講演の紹介
カンファレンスでは、Zabbix Japan LLCメンバーの講演以外にも、実際にZabbixを利用するユーザーによる導入事例・活用事例などの講演もあります。
運用フェーズやシステム部門以外でのZabbixの活用
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 勝野 基央氏
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社の勝野氏から、全国各地に配置されたATMの稼働状況の監視、Ansibleと連携した監視開始までの自動化、RPAの開発環境における障害検知とRedmineへのチケット登録の自動化をZabbixで実装していると紹介されました。
「ZabbixについてはウェブのGUIもそこまで抵抗のある見た目をしていない。ダッシュボードなどを成形することで、通常ITにあまり関わらない部門にも受け入れられやすい。」(勝野氏)
Zabbixは自由度が高く、多機能であるためさまざまな場面で活用できるポテンシャルがあります。一般的にはインフラの監視に利用されることが多いZabbixですが、先入観を持たずにインフラの垣根を越えた活用方法や業務アプリケーションライクな活用方法について考えることが重要であると感じました。
Zabbix初心者が課題対処(DB肥大化・新規構築)から学んだ・学んでいること
株式会社エーピーコミュニケーションズ 池上 裕幸氏
株式会社エーピーコミュニケーションズの池上 裕幸氏からは、Zabbixを使っているユーザーなら誰もが一度は経験したことがあるような事象に対して、どのように解決を図ったかについて紹介する講演がありました。
「Zabbixの動作が重い」や「ダッシュボードにログインできない」というユーザーからの問い合わせをきっかけに、初動対応のDB調査から原因調査におけるログ監視データの分析、根本対応としてのパフォーマンスチューニングを実施するなかで苦労した点などが語られました。
「Zabbixを本当の意味での監視ツールとして使う基礎知識やノウハウが不足していると感じている。解決策として地道な学習やカンファレンスで有識者の知識に触れるなどをおこなっていきたい」(池上氏)
Zabbixは保守サポートや公式トレーニングなどのサービスが提供されており、今回のカンファレンスをはじめとしたイベント、Zabbix Japan LLCと認定パートナー企業によるウェビナーも数多く開催されています。また、カンファレス会場ではZabbixサポートメンバーに導入やインストール、アップグレードなどの作業の不明点、運用中のZabbixにおけるお困りごとなどの技術的な質問が可能な「Zabbixテクニカル無料相談会」も開催され、自ら情報やノウハウを集めやすい製品であると感じています。
これらの機会を上手く活用し効率的にZabbixをキャッチアップすることで、自社のZabbix環境の課題解決に繋がるのではないかと思います。
Zabbix Japan LLCと認定パートナー企業が開催するウェビナーについては、以下のZabbix Japan LLC公式サイトをご覧ください。
https://www.zabbix.com/jp/webinars(外部サイトに移動します)
Zabbixのコンテナ運用管理「Zabbixをクラスター化して大規模監視に対応した話」
フリーランス 津野 哲平氏
フリーランスのインフラエンジニアとして活動されている津野氏からは、某製造業のお客様向けにZabbixの監視環境を再構築した事例が紹介されました。
当時、お客様のZabbixはサイジング段階における計算ミスからのDBの肥大化、統一されたルールがないことによる監視設定の差分など多数の問題が発生していたため、一から作り直すことを提案したと語られました。再構築にあたり以下を実施することで、既存環境で発生していた問題の改善を図ったそうです。
- ユーザー管理はGrafanaのLDAPの情報を参照する機能を活用して省力化
- データストアはバックエンドにElasticsearch、Fluentdを活用して高速化
- Zabbix Serverは設定管理用、監視実行用と用途ごとにクラスター化
また、インフラ基盤としてはKubernetesを採用し、以下の方針で設計されたと語られました。
「落ちないシステムではなくて、短時間で復旧させるシステムを目指す」(津野氏)
再構築してから現在まで、監視対象は約7,500、監視項目は約830,000、最大NVPS(一秒あたりの監視データ数)は4,500前後という非常に大規模な監視規模ですが、問題なく安定した運用を実現できているとのことでした。Zabbixが果たす役割とそれ以外のツールにカバーしてもらう役割とを明確にし、パフォーマンス向上を目指すやり方が非常に印象的な講演であったと思います。
当社のスポンサー講演
当社は本イベントのスポンサー企業として、1日目に講演しました。「Zabbix環境の冗長化手法 早わかり解説!~Native HAってどうよ?~」と題して、Zabbix 6.0LTSから搭載されたNative HA機能をはじめ、Zabbixサーバーの冗長化の種類と選択について紹介しました。

本講演で紹介した冗長化手法について、当社は「高可用性(冗長化)環境構築サービス」というソリューションを提供しています。お客様や監視環境に応じて、最適な構成で可用性の高い監視環境を構築します。「高可用性(冗長化)環境構築サービス」の詳細については、当社の紹介ページをご覧ください。https://moz.arksystems.co.jp/service/high-availability/
おわりに
Zabbix Conference Japan 2022の参加レポートは以上です。10周年の節目にZabbix社としても更にユーザーに利用しやすいサービスを提供しようとしている熱量を感じたイベントでした。
Zabbixカンファレンスは、今後リリース予定のバージョンで搭載される新機能や活用・導入事例について情報収集できるだけでなく、「Zabbixを使ってみたい!」や「もっと使いこなしたい!」と思えるようなモチベーションアップにも非常に良い機会だと考えています。
当社も認定パートナー企業の1社として、これからもZabbixの活用をキャッチアップするとともに、多くのユーザーにZabbixを使いこなすためのお手伝いをしてまいりたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
株式会社アークシステムはZabbix Japan LLCの認定パートナー企業です。
Zabbixに関する製品・サービスの販売に加え、Zabbix関連サービスの提供をしています。
(2018年度からZabbix認定パートナー幹事企業の1社として活動しています。)
運用管理技術のプロフェッショナルであるアークシステムが
Zabbix環境におけるさまざまな課題を解決いたします
当社の価値はお客様のビジネスを支える高度なIT技術や運用基盤の提供にあります。
お客様の課題や問題意識を受け止め、IT戦略/企画の立案、実行性のある計画作成から運用整備とデリバリーまで、さまざまな形態のサービス提供をしています。これまで培った運用管理技術とZabbix技術の豊富なノウハウと実績をもとに、実運用に耐えうる高品質なZabbix環境の構築や課題解決をいたします。