私たちアークシステムは、2020年11月13日(金)~14日(土)に開催されたZabbix Conference Japan 2020に、スポンサー企業の1社として参加しました。
今回は、今年で8回目を迎えたZabbix Conference Japanの模様をレポートします。
Zabbix Conference Japanとは?
既にご存じの方も多いと思いますが、Zabbix Conference JapanとはZabbix Japan LLCが主催する、日本国内最大のZabbixイベントです。
日々サポートを担当しているZabbix Japan LLCのメンバーによる講演、実際にZabbixを利用しているユーザーからの事例講演、Zabbixを利用したシステム運用を便利にするソリューションの紹介など、Zabbixに関して幅広いテーマで講演がおこなわれます。
今年は新型コロナウィルスが流行してるため、会場とライブストリーミング配信の同時開催となっています。会場では感染症対策として、検温の実施・手指のアルコール消毒・参加者のマスク着用・座席間隔の確保などが実施されており、安心してイベントに参加できる環境を整えた形での開催となりました。
また、オンラインでは「Q&Aコーナー」も設けられており、講演内容の疑問点などをリアルタイムで投稿できる仕組みはライブストリーミング配信ならではのメリットと感じました。
当日のアジェンダおよび講演内容の詳細は、Zabbix Conference Japan 2020 公式サイトでご覧いただけます。
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2020
Zabbixをより安心・便利に利用してもらうための3つの取り組み
オープニングスピーチを飾ったのは、Zabbix Japan LLC CEOの寺島 広大氏でした。
寺島氏からは、Zabbixに関する最新の動向についていくつかのトピックとともに、海外はもちろん日本国内においてもZabbixを導入する企業は増加し続けていることが紹介されました。
年々勢いを増すZabbixですが、安心して多くのユーザーが利用し続けられるよう、Zabbix LLCならびにZabbix Japan LLCは、以下の取り組みを実施しているとのことです。
安心してZabbixを利用してもらうための体制強化
2001年にZabbixが公開されて以来、約1年半ごとに安定版(LTS)がリリースされてきましたが、バージョンによってはしばしばリリースが遅れることもありました。
Zabbix LLCでは開発・サポートのエンジニアを増員し、日々開発スピードを改善しているとのことです。
バグフィックスやユーザーからの声を反映した機能の修正などがスピーディに実施されることで、私たちユーザーも安心してZabbixを利用できる環境が整えられています。
Zabbix Enterprise サポートのサポート内容の強化
サポート契約者向けに提供されている、Zabbixの運用に役立つさまざまなツールをまとめたパッケージ「Zabbix-Enterprise-Utils」の内容の見直しとしてデータベースのクリーンアップ機能の実装や、サポート契約者向けに新たな特典を検討していると発表がありました。
サポート契約を締結することでZabbixに関する問い合わせができるようになるだけでなく、より使いやすくなることが期待されます。
認定トレーニングの新バージョン(Zabbix 5.0)への対応
Zabbix認定ユーザー、Zabbix認定スペシャリストのトレーニングコースについては最新のLTSバージョンであるZabbix 5.0に対応しており、Zabbix認定プロフェッショナル、Zabbix認定エキスパートについても順次対応していくとのことです。
公式のトレーニングが充実していることも、Zabbixが選ばれる理由のひとつであると思います。
最新のLTSバージョンであるZabbix 5.0については、当社でも新機能を紹介した記事を作成していますので、あわせてご一読ください。
https://moz.arksystems.co.jp/archives/zabbix-50/
Zabbix 6.0に向けた今後の開発方向性
ユーザーからの声を反映させながら成長を続けるZabbixですが、次期LTSバージョンのZabbix 6.0は2021年第4四半期のリリース予定となっています。
Zabbix LLC CEOのAlexei Vladishev氏からは「Zabbix 6.0 LTSへ向けたロードマップ」と題して、今後の開発方向性についての講演がありました。
主なトピックは以下の通りです。
クラウド監視の強化
Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)をはじめとしたパブリッククラウド、Kubernetes向け監視テンプレートの開発が予定されていると紹介されました。
Zabbixプロキシの強化
オンプレミスとクラウドが混在する環境では、インターネット経由でZabbixプロキシを利用した分散監視を実装するケースがあります。よりクラウドネイティブな環境に対応するため、Zabbixプロキシの冗長化機能と負荷分散機能を強化していくことが紹介されました。
IoT機器監視の強化
海外では工場内の産業機器やセンサーをZabbixで一元的に管理する事例が増えている中、今後もIoT機器の監視を強化していくことが紹介されました。
Zabbix 5.2ではIoT機器の監視のため、よく利用される通信プロトコルであるModbusおよびMQTTに対応したアイテムが追加されています。
データ解析機能の強化
ベースライン監視のため、AI(人工知能)とML(機械学習)機能を強化していくことが紹介されました。
Zabbix 5.2では長期解析用のトリガー関数が追加されています。
また、講演の中でAlexei Vladishev氏は「Zabbixはオープンソースであり続ける」ことを強調しており、今後も無償で利用できること・ユーザーからの要望を反映した改善を継続することなどが熱く語られました。
最新のロードマップについては、こちらの公式ページをご覧ください。
https://www.zabbix.com/jp/roadmap
当日の講演紹介
当日はZabbixに関するさまざまなテーマで講演がおこなわれましたが、実際にZabbixを活用しているユーザーからの生の声が聴ける貴重な講演もありました。
以下簡単ではありますが、ユーザーの活用事例を2つ紹介します。
(事例)SOMPOシステムズにおけるZabbix Japan LLC監視基盤とは
SOMPOシステムズ株式会社 金子 優介氏
SOMPOシステムズ株式会社の金子 優介氏からは、監視システム更改プロジェクトを経て構築されたZabbix監視基盤について、選定するに至った経緯が紹介されました。
「当時の課題としては、監視基盤のハードウェア保守老朽化が迫っていること、監視登録工数の増大傾向にあること、監視マネージャー台数が多いため保守コストを削減する必要があったこと、新規受入時の影響調査/レグレッション対応に時間がかかっていたことなどがあり、これらを解決するために監視システムのリニューアルを決断した」(金子氏)
Zabbixを選定した理由としては、「ライセンス維持コスト」「導入、構築の容易さ」「1万台規模を監視できる製品性能」「監視登録の自動・簡易化」などを挙げられており、社内の担当者からの「オープンソースにチャレンジしたい」という強い想いも後押しになったと語られていました。
現在はさらなる自動化・効率化による稼働工数削減を目指し、Zabbix APIを活用したツール開発にも注力しており、運用系ツール・監視系ツールを20個以上開発してきたそうです。
大規模な監視環境を運用するうえで、現場からのヒアリングシートもとにテンプレートを自動で作成できるツールや不要なアラートを抑制するための監視抑止ツールは非常に有用だと感じました。
(事例)医療の現場を陰で支えるZabbix
公益財団法人北海道医療団 清水 圭介氏
公益財団法人北海道医療団の清水 圭介氏からは、医療現場を監視し続けるZabbixについて紹介されました。
「ネットワーク機器の障害から請求業務ができなくなり、患者様をお待たせしてしまったことがあった。この障害を機に、現場を止めることなく障害を予防できないか、もっと早く障害を発見できないかとZabbixの構築を始めた。」(清水氏)
「自分たちで構築できる」「構築を始めるのに大規模な予算獲得がいらない」「ユーザーによる技術情報がWeb上に数多くあるため運用上発生する課題を自分たちで解決できる」という観点から、Zabbixの導入を決定したとのことです。
病院では、24時間365日救急患者を受け入れられる体制を維持することが求められます。
サーバーやネットワーク機器だけでなくIPアドレスを持っている機器は全てZabbixで監視する方針で監視を設計し、万が一主系がダウンした時に備えてZabbixサーバーは2台構成で常に監視をおこない、常にシステムが正常に稼働していることを監視する仕組み、現場からの連絡より先にトラブルを検知する仕組みを構築したとお話がありました。
2018年9月に発生した北海道胆振東部地震の発生の際の停電時には「サーバーおよびネットワークの状況をZabbixで確認しながら業務を継続するための対策を立てられた」「Zabbixがなければ迅速な対応は不可能であった」と振り返られていました。
医療現場という24時間365日止められない環境を監視し続けることの重要性を生の言葉で、またそこにZabbixが活躍していることが聴けた非常に有意義な講演でした。
その他にも、Zabbix Japan LLCの開発・サポートメンバーによる検証事例や認定パートナー各社によるZabbixを利用したシステム運用を便利にする関連ソリューションの紹介がおこなわれました。
当日の講演内容の詳細は、こちらのZabbix Conference Japan 2020 公式サイトをご覧ください。
https://www.zabbix.com/jp/events/conference_japan_2020
当社のスポンサー講演
当社はスポンサー企業として、2日目に講演させていただきました。
「Zabbixに関する疑問・お困りごとの解決の手助けに… ~アークシステム技術ブログのご紹介~」と題しまして、当社の技術ブログに掲載しているZabbix関連記事を紹介させていただきました。
これまで参加してきたZabbix関連のイベントでも、「Zabbixは設定が複雑・面倒である」「分かる担当者が限られてしまう」という声を聞くことが多くありました。
当社ではそんなユーザーのお悩みを解決する一助となるように、Zabbixに関する技術情報をブログで発信しています。講演では、より多くのユーザーに読んでいただいている記事4つを紹介させていただきました。
以下にリンクを添付しますので、よろしければご一読いただけますと幸いです。
おわりに
Zabbix Conference Japan 2020の参加レポートは以上です。寺島氏から紹介されたように、日本国内でもZabbixを利用する企業は増加し続けており、年々勢いを増しています。
その背景には、Zabbixが無償で利用できることはもちろんですが、開発元であるZabbix LLCやZabbix Japan LLCがよりユーザーが安心して・便利に利用できるように、日々改善に向けた取り組みや万全なサポート体制を提供してくれているからだと強く感じました。
当社も認定パートナー企業の1社として、これからもZabbixの活用をキャッチアップするとともに、多くのユーザーにZabbixを使いこなすためのお手伝いをしてまいりたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
株式会社アークシステムはZabbix Japan LLCの認定パートナー企業です。
Zabbixに関する製品・サービスの販売に加え、Zabbix関連サービスの提供をしています。
(2018年度からZabbix認定パートナー幹事企業の1社として活動しています。)
運用管理技術のプロフェッショナルであるアークシステムが
Zabbix環境におけるさまざまな課題を解決いたします
当社の価値はお客様のビジネスを支える高度なIT技術や運用基盤の提供にあります。
お客様の課題や問題意識を受け止め、IT戦略/企画の立案、実行性のある計画作成から運用整備とデリバリーまで、さまざまな形態のサービス提供をしています。これまで培った運用管理技術とZabbix技術の豊富なノウハウと実績をもとに、実運用に耐えうる高品質なZabbix環境の構築や課題解決をいたします。